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名古屋文具朝食会で講演してきました
名古屋の文具朝食会で講演してきました。
「文房具についてしゃべってください」ということだったので タイトルは「自分を育てる文房具」としました。 朝早くから来場して下さった皆さん、 本当にありがとうございました。 講演は書籍と違って、その場で反応がわかるし 最新の考えを発信できるというところが好きです。 反面、編集者的な人がいないので、 あまり練られていない考えがそのまま出てしまったりするので なんどやっても、変なことや余計なことを言わないかと緊張します。 なんせ普通にしゃべっていても、「何を言っているのかわからない」 といわれるくらいですから……文章の方が得意なんです。 今回は、写真を撮るのを忘れたので、 しゃべるときに見ていた講演メモ (レジメはこの短縮版)を、 そのままアップしておきます。 実際の講演はもっと脱線しまくってしまいました…… 話は毎回変わりますが、だいたいこんな感じで スライドショーしながら話をしてます。 うちの会にも来てくれ! というお話しがございましたら 連絡フォームからご依頼下さい。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 110627 名古屋文具レジメ/奥野宣之 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■自分を育てる文具術――生きるためのツール選び―― □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■文房具はなぜ楽しいのか? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ・本に書いてあることをそのまましゃべるのは好きじゃない ・だから知的生産WOとかノート本で書いたことはそんなに触れない ・すいません ・自分が受け手だったら同じこと言われるとガッカリする ・まず、同じことを話すのは自分が退屈 ・もっと大きな理由は、本を読んでくれた人の理解を壊すから。本が正しい ・作家に会わない方がいいという説もある。想像力を壊すから ・考えていることはどんどん変わる。一周して戻ってることもある ・書いた人と本は関係がない。受け手の偶発的理解が大事 ・読書はプライベートな行為。それが醍醐味 ・著書について説明することはそれを壊すのでは ●昔の「文具七宝」と現代の文具コミュニティ ・文具コミュニティによく呼ばれる ・文具嗜好、実は新しいことじゃない。昔からある ・昔の文具七宝、明窓浄机との違いは、楽しさの共有と新商品の頻度、技術革新、多様化 ・道具が好きなのは英知を感じるから ・だが、迷いもある。こんな道具ばかり選んでいいのか? ・道具にばっかりこだわるのは本質をおろそかにしているような ・迷ったときはどっちも体験してみること。呑めない人が「呑み会は時間の無駄」は反則 ・タバコとかバクチとか原発とか。矛盾したことをするから人間 ・人間とは何か。永遠の謎があるから本を読んだりする ・自己矛盾は大事。矛盾していることは考え続けること。成長の条件。表現者の条件 ●道具を選び抜くことは能動的な生き方の発露 ・買って試すこと、捗ること、所有する楽しみ ・いい傘を持っていると、雨が降ってほしいと思う。価値転換をもたらす ・万年筆はインク切れが楽しみ ・時間がない、机が狭い、通勤ラッシュ。価値転換できるか ・なんでも自分で選ぶこと。能動的な生き方 ・能動的であれば、どんな状況でもハッピー ・パンツでもボールペンでも、お仕着せは嫌だ ・三島由紀夫のミルクティーの話 ・一事が万事。そこに生き方がかかっている ☆梅棹忠夫 ●文房具は精神の自由を噛みしめるための装置 ・本当にすごいことは自由さ。精神活動の自由を満喫すること ・紙とペンがあればなんでもできる。無限の可能性がある。自由さの実感 ・小説も書ける、大ヒットキャラだって描けるはず。アイデア次第 ・ノートを持ち歩くことは自分を信じること。体験、思想の自由さを重んじる姿勢 ・メモを持ち歩くことは自分と世界への期待感 ・日常から発見できると信じること ☆松浦武四郎 ●「頭の中→成果物」の引っかかりがなくなる ・「○○ができる」より「○○を邪魔しない」。頭の働きを阻害しない道具がいい ・たとえば文章作成ではwordでなくtxtを使う ・ボールペンがかすれると頭の中にゴミを入れられたような気分になる ・ボタ落ちのない油性ボールペン、ぬるぬるの万年筆を愛する ・インクがどくどく出るとアイデアもどくどく出るような気分になる ・裏紙メモはちょっと嫌。余計な情報がある ・PCはその辺の精神の機微をまるでわかっていない ・PCのアップデートは許せない ●心はデジタルだけでは満たせない ・パソコンとはまったく違う行為。紙とペンは手放せない ・便利なだけではダメ。使う喜びがないと ・フラッグシップモデルの掃除機に怒られる ・効率だけではない。人間の心はそんな単純じゃない ・たとえばシュレッダーの代わりになるハサミ。どう考えても不要、でもやりたくなる ・スケジュールはgoogleカレンダーをやめた。頭の中にカレンダーができない ・仕事をしている実感がほしい。原稿用紙を積み上げるような ・吉村昭は原稿用紙を焼いた。マンションに焼却炉が欲しい ・TODOリストもデジタルからカードになって100均のメモ帳に ☆植草甚一 ●手を動かすためにあえて文具を使う ・バクチでもいいから手を動かせ、と孔子 ・文具で強制的に自分の手を動かし、頭を動かせる ・パソコンより多用な手の動かし方がある □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■「実感」を得るための文房具 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●単機能の道具の美しさ ・それをやるとき、最適の道具を引っ張り出してくる ・文章を書くパソコンにエロ画像が入っているのって嫌じゃないか、と評論家 ・クラシックカメラを眺めるときの気持 ・競技用自転車、バイク。反対はなんでもできる。クルマも ・文具でいうと万年筆、ペン、カッターナイフ、ポメラも一応 ・なんでもできると役に立つが、美しくない ・単機能を極めると自動的に美しくなる ・ウェンガーは不思議 ・人間には一つの道を究めたいという心がある? ●「余計なものがない」という贅沢 ・余計なものに囲まれて暮らしている ・贅沢とは余計なものがないこと ・雑誌の広告をやぶってしまう ・シンプル・イズ・ベストは深い言葉 ・脱線しない。それしかできないから集中する ・ノートも同じ。音楽もゲームもできないからいい ・外部を遮断し、自分に向きあう時間ができる ・何かを書く、思考を書き出す癖をつける ☆もたない男 ●人間をスポイルする道具はいらない ・ドーピングはなぜダメなのか。レーシックはいいの? ・ようするに嫌だなという感覚。神聖なものを犯されたような気分。 ・人間には羽も牙もない。知識や経験、情熱、技術、能力だけが絶対的な財産。 ・これを失うと何もなくなってしまう。気をつけたい ・ネットですごい表現が出てくるか、疑問 ・「何かを得れば何かを失う」と開高健。致命的なものは失いたくない ・ルンバはちょっと怖い。自分でトイレをピカピカにすると誇らしい気分になる ・まだやれるな、という感覚 ●「夢をかなえる」と「自分を鍛える」 ・夢とか、そういう感覚がよくわからない ・幸福とは、自分の能力が発揮できている状態 ・飯を食べるのを忘れて原稿を書いてたとか、ものを作っていたとか ・クラシックカメラで気づいたこと。失敗がなくなれば上出来もなくなる ・新しいもの好きなのでスマートフォンはほしい。が、ちょっと葛藤する ・スポイルする道具かもしれない ●やはり「自分の考え」を持つこと ・この文房具が便利ですよ、と言ったって仕方ない ・自分なりの使い方、工夫があればもっと楽しい。神性不可侵な世界 ・自分の頭で考えることは難しい。受け売りになる ・検索して自分の意見と同じ人を見つけて安心する ・コピー・アンド・ペーストで組み立てて「思考のタダ乗り」をしてしまう ・ネットをやめる方法を書きたいといったら「パソコンをゴミに出せば」と ・というわけで最近はPCをサブ机に移動させた。「座るとPC」はよくない ・ネットもノートPCに担当させることにした。実験中 ・文具ブームはITにスポイルされる恐怖への対処、防御本能かも ●重装備はフットワークを奪うか? ・登山関係の本が好きでよく読む ・ウルトラライトという考え方。67歳の婆さんが3500キロ5カ月 ・体力も道具もないから「逆に強い」。いいよね ・最近のノートはこうなっています ☆ウルトラライト ●シンプルな道具を工夫して使う ・使いこなしを発見したとき、熟練したとき、幸せを感じる ・なじませる喜び、メンテナンスする喜び ・自分にしか使いこなせない道具の方がいい ・自分の世界を作ってほしい □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■「+α」を狙うための文房具とは □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 普段使いの文具を語る ●直接的に役に立つ文房具 ・吸引式の万年筆 ・パワータンク ・クルトガ ・ボールぺんてる ・ノート ・ロディア ・ブロックメモ ・カード立て ・プロッキー ・電子辞書 ・キーボード ・TODOカード ●間接的に役に立つ文房具 ・ようするに「手慰み」の道具、手慰みには「バクチ」の意味もある。孔子! ☆作家の書斎 ・地球儀 ・砂時計とタイマー ・クラシックカメラ ・辞書 ・ラジオはNHK教育 ・愛読書 ・白衣 ・カバン ・サイフ ・オフィスグリコ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■参考:道具との付き合いを考える名言・名句 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 草履を綯うことができない。それは、あるときは死を意味する。虻にさされたら菊の葉をすりつぶしてつければよいという知恵がない。すると、私が生きているのは、文明という約束事によってふわふわと生きているのではないか。(山口瞳『旦那の意見』) ―――――――――――――――――――――――――――― 精妙をきわめた自動装置で何万本、何十万本と一つのブランドの万年筆が製造されるのに、使用者の指と化し果てるまでになじみきれるのは一本か二本あるかなしであるという事実は興味が深い。しかも、K氏にとつてのその一本がO氏にとってはしばしばどうしようもないシロモノと感じられるのがふつうであるという事実もまた興味が深い。ヒトには個性があり、癖があり、好みがあって、そこにこめられた心は不可侵であり、小さな聖域であって、どうしようもない性質のものである。いささか大仰に申上げると、この心はつねに匿名であるが、ひそやかに感覚が思想になりきっている部分でもあつて、この部分にこめられるヒトの親愛の純粋とひたむきは他に発現を見ることがないのである。ただ、その偏愛はつつましく器物内にとどまって、他の情熱のようにドアの外にとびだして他人を頭から説教したり、血を流したり、涙を落させたりすることがないので、清らかである。 中国の古人が毛筆や紙の選別につぎこむ愉しみを"文房清玩"と呼んだのはいかにも洞察力のあるつつましい、洗練の極みのこころであると感じられる(開高健『生物としての静物』) ―――――――――――――――――――――――――――― ……そりゃ、退屈だからですよ。 人間っていうのは基本的に退屈してるんです。 自分に死ぬほど飽き飽きしてるんです。 つまり人間はいつも自分じゃないものになりたいんですよ。(伊丹十三『伊丹十三の本』) ―――――――――――――――――――――――――――― 煙草を喫う人は気づいているはずだが、暗がりや風の強いところで喫う煙草はおいしくない。煙草の味の何パーセントかは、ゆっくりと立ち上る紫煙の美しさに対する視覚上の効果によるからなのだ。(中略)とすれば、人間の微妙な脳の働きにもとづく読み・書き・考えなどの精神活動が、文房具が与える視覚・触覚・重量感またその位置などの影響に左右されないはずはない。(板坂元『考える技術書く技術』) ―――――――――――――――――――――――――――― バックパッキングとは何を持っていくかではなく、何を置いていくかだ(出典不明) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■参考:道具と人間を考える本 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ・『荒野へ』(ジョン・クラカワー/集英社文庫) ・『もたない男』(中崎タツヤ/飛鳥新社) ・『生物(いきもの)としての静物』(開高健/集英社文庫) ・『ウルトラライトハイキング』(土屋智哉/山と渓谷社) ・『植草甚一スタイル』(植草甚一/平凡社)
by okuno0904
| 2011-07-11 17:43
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